大きなのびしろを持つHOKKAIDO SHOWCASEに期待
“Hokkaido Showcase” インタビュー
高島屋シンガポール 食品部門 部長
三田 諭 さん
<プロフィール>
1967年1月28日生
1990年髙島屋入社。横浜店食料品部に20年間勤務し、グロサリー・物産展催事・生鮮・惣菜佃煮・寿司弁当おせち・和菓子の売場を経験。2010年シンガポール店に異動。フードフロア全般を担当し現在にいたる。
信頼やブランドを大切にするシンガポールの人々
私は平成2年に高島屋へ入社以来、横浜店に20年間務め、食料品一筋に歩んできました。5年前にシンガポール勤務となり、“デパ地下”といわれる食料品売り場の責任者を務めております。もうかれこれ25年間、高島屋で食料品に携わっていることになりますね。
基本的に日本でも、シンガポールでも、「お客様のために尽くす」という高島屋のポリシーに変わりはありません。富裕層だけがターゲットではなく、来てくださるすべての人がお客様なのです。
ただし、お客様は地域によってマーケットにかなり違いがあります。それを把握するためには、何よりも来店されるお客様を“見て”、実際にお話を“聞いて”、マーケットの違いを判断していくのがベストです。アンケートというのはどうしても誘導的になりがちなのですが、実際にお客様が商品やサービスを喜んでくださったり、「こうだったらいいわね」と感想をおっしゃってくださる内容というのは、大いに役立ちますね。ときにはお叱りを受けることも、とても重要な情報源です。
シンガポールには華僑の人々が多く、“信頼”や“ブランド”をとても大切にされます。オープン当初はそうしたシンガポールの方々と日本人との違いが把握できず、「いつ閉めるのか」といわれるほど苦戦を強いられたものです。実際にいくつもの百貨店が撤退をしていく中、「このままではいけない」と高島屋は大きく発想を転換し、シンガポールならではのマーチャンダイジングを確立したのです。高島屋シンガポールはオープンして22年になりますが、今では「Taka」の愛称で親しまれるほどに成長することができました。
百貨店と生産者が共に作り上げる売り場に
私が一バイヤーとしてお勧めできるのは、商品そのものが良いだけでなく、日本国内でしっかりと競争力を持っている商品です。「日本で競争できないから国外に出る」というのでは、正直難しいですね。もちろん例外はありますが、日本で商売ができない商品は、国外で売れるわけがないというのが基本的な考え方です。
もう一つ大切なのは、高島屋の企業ポリシーと同じ方向を向いている生産者であることです。そのために、私はお会いした方にその商売に至った経緯や、その裏に隠されたストーリーをしっかりとお聞きします。そして、そこで見えてきた思いが高島屋と同じなら、一緒に売り場を作っていけると判断します。加藤さんとは、私共のジャパンフェアにご参加いただいたのがきっかけで出会いました。話のやりとりをしていて、加藤さんは話し上手でありながら、とても聞き上手なんですよね。加藤さんが誠意ある対応をされるということを、お客様もよく見ていらっしゃるのではないでしょうか。
シンガポールの人々は、北海道に対して「憧れ」と言っても過言ではないような想いを持っています。赤道直下のシンガポールに住む人々は、雪を触ったことも、見たこともありません。日本人が“常夏の島ハワイ”に憧れるようなものでしょうか。
また、日本の国民性である“おもてなし”を体験してみたいという思いや、産地から持ってきたものをそのまま頂けるという「食」に対しても、とても関心を持っています。
おもてなしの心で好印象のHOKKAIDO SHOWCASEの売り場
HOKKAIDO SHOWCASEと高島屋とのお付き合いは今回で4回目を迎えていますが、HOKKAIDO SHOWCASEがシンガポール人に好印象であることは間違いありません。というのも、北海道から販売員の方々がやってきて、シンガポール人に積極的に声がけをしているんですよね。商品が単に棚に並んでいるだけというのではなく、日本の現地の販売員が「いらっしゃいませ」「この商品おいしいですよ。よかったらお味をみていきませんか?」と、直接お客様に語りかけているのです。このひと言が、とても大切なんです。言葉が日本語まじりになるのは、むしろ好印象だと思います。
商品と接客サービス、その二つが合わさって販売価格になると、私は考えています。HOKKAIDO SHOWCASEのスタッフは商品の説明能力・サービス能力が高く、“おもてなし”のできる方々ばかりです。そして、シンガポールのこと、高島屋のことをしっかり理解したうえで販売にあたっているので、リピーターが多いのでしょう。「あなたから買って良かった」という声も聞かれます。
高島屋としても、その商品が売れるかどうかだけでなく、その裏にあるストーリーや想いに共鳴し、商品をお勧めしています。商品の半分はサービスだと言っても良いでしょう。また、HOKKAIDO SHOWCASEで商品を購入したお客様は、直接北海道を訪ねるケースが非常に多いですね。こうして高島屋から北海道へとお客様がつながるので、私共も日本国内でしっかりと商売をしている方でないと、おすすめできません。店頭で商品を売るということは、旅行先まで責任を持つということだと考えています。
大切なのは商品の裏側にあるストーリーを伝えること
HOKKAIDO SHOWCASEは、今後もっと伸ばせる部分がたくさんあるように思います。そのためには、高島屋の他の店舗スタッフの販売方法をじっくり見てみることですね。お見送り、お声かけ、試食をするときの一歩前へ出る姿など、参考になる点はいろいろある筈です。
ディスプレイやポップの作り方なども同じです。単に整理整頓するだけではなく、お客様をキャッチするディスプレイを考えるなど、さらに工夫できる点があると思います。商品の良さを伝えるテクニックとしてそれらを身に付けることで、「気付いたら商品が売れていた」という状況になることでしょう。
また、パッケージについては、常々デザインしすぎないようにとアドバイスをしています。訴える必要があるのはパッケージでなくその中身・商品そのものです。この素晴らしい商品の素材を、こんな風景の中で育てていますよ、春夏秋冬こんなに風景が違うんですよというようなイメージを、パッケージ以外の方法で伝えていけたらいいのではないでしょうか。「この商品の裏側にあるストーリーを伝えたい」という思いが大切です。ベネフィットを伝えるのはとても簡単でそれをアピールしてしまいがちですが、日本や北海道へ強い憧れを抱くシンガポールの人々に、憧れを強くするような話題を提供して差し上げることも重要だと思うのです。